ハイデラバードの夜風

言い伝えによると、その昔ニザーム家には、糖尿病を患っていたために、大好物のマトン・ビリヤーニーを、一日にスプーン2杯だけ食することを侍従医から許されていた藩王がおり、乗せ固められる最大量のビリヤーニーをスプーンに2杯だけ懸命に盛り、とても藩王とは思えないような作法で無我夢中で食したと言われる。

ビリヤニを食べると滝のように汗が流れ、その対処で手一杯になる。しばらく待つ。だいぶ待つ。汗の勢いが衰える。だが食べようと決めたんだった。手を付ける。一口で汗が戻ってくる。汗が止まらない。どうすることもできない。どうしてこんな状態になるのにビリヤニを食べに来るんだろう。でも美味しい。つらいけど美味しい。美味しいってそんなに大事なことか?とはいえ美味しい。汗がひどい。サンズイが干上がらない。すべて紙に吸収してもらおう。もう一休み。もう無理。やっぱり最後まで食べましょう。汗は終わらない。終わり。まだ終わらない。本当に終わり。本当はいつまでもやってこない。もうこんな事やめたい。いつまでもいつまでもビリヤニのことばかり考えてしまう。

そんなこともないだろう。ビリヤニ美味しいね。たまにでいいけど。それでグッド。もっと言えば、寿司は最近ほとんど食べていないけど、あるいは食べていてもそれを認識しないけれど、常に支えていてくれる。それは高級な寿司を食べることが出来る自分への満足などではない。

神経細胞は複製できない。とはいえ、自分がその都度ごとに死んでいっていることを認識するのは有用かもしれない。

エビ。スパイス。魚介。カレー。魚介。エビ。カレー。魚介。カレー。エビ。エビ。カレー。魚介。エビ。スパイス。エビ。カレー。もう本当にビリヤニじゃないんだと謳う。

 

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