トルティーヤキンパ

本屋を探していた。塔ではないはずだった。だが結局のところ、雨の中、寿司に吸い寄せられる。地図上には書いてある細道がどうしても見当たらない。おそらくは雨のせいだろう。いつだって多すぎるのに、いつだって何もかも見つけられない。

寿司を除いては。

その寿司は潜んでいた。あたかも普通のカフェだ。コーヒーとお茶どっちにする?お茶で、といっても紅茶。サンドイッチでもつまもうかね。覗けば、数種類の、ロー、ル?まあロール寿司だろう。恵方巻より大きいくらいだな。珍しい。安い。パックを開けてみよう。何かがおかしい。そう、米と海苔の間にトルティーヤ的な皮が挟んである。

海苔、トルティーヤ、米、具。
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具、米、トルティーヤ、海苔。

醤油をつけない類の味。むしろ韓国海苔巻きのキンパに近い。これは寿司なのか?寿司と認められるのか?間違いなく、それもまた寿司。もしかすると日本人の多くはトルティーヤキンパを寿司と感じないかもしれない。しかしそれは凝り固まった先入観が強すぎるからに過ぎない。トルティーヤキンパは寿司だし、寿司はトルティーヤキンパである。おそらくロシア人にとっては本気でどうでもいいんだろう。なんて適当な!しかしその適当さに救われる命もある。トルティーヤ一枚分の救いがある。ロール寿司ですらなくていい!寿司に対する強迫観念を捨て、トルティーヤを挟んで韓国海苔を巻く余裕を持ちたいものだ。その境地を目指していこうと心の底から思った。泣きたくなるほど可変性に賭けるしかないのだ。

本屋はまるで塔だった。そこから寿司人間を球体にして宇宙に打ち出す。